ふと夜空を見上げたとき、

月のうさぎが月から飛び出して釣りをしていたら——

そんな想像から生まれた一枚の絵を、

今日はご紹介します。

私は、「物語の入り口のような絵」

を描きたいと思っています。

見る人の心に、小さな物語がそっと芽生えるような。

その想いのルーツを辿っていくと、尊敬する2人の画家に行き着きます。

光と影で描く幻想の世界ー藤城清治さん

一人目は藤城清治さんです。

藤城清治さんの作品を初めて見たとき、

私は息をのみました。

影絵という限られた表現の中で、

あれほど豊かな色彩と光の演出ができるとは!

代表作『銀河鉄道の夜』や『聖フランシスコの夢』には、

闇の中に確かな祈りと希望が灯っていて、

心の深い場所に静かに届いてきます。

星や月、動物、天使、こびとたちが生きている世界。

藤城さんの絵を見ていると、

現実と離れ、

いつまでもその夢の世界の中にいたいような、

そしてどうしたらこんな素敵な世界が作れるのだという

ワクワクドキドキがとまらない気持ちになれます。

ちなみに、栃木県那須町にある《藤城清治美術館》では、

彼の代表作から最新作までを、

美しい影絵の演出とともに楽しめます。

まるでメルヘンの中を歩いているような空間です。

静かな詩を描く旅人ー安野光雅さん

二人目は安野光雅さんです。

安野光雅さんの絵本

『旅の絵本』シリーズには

言葉がありません。

でも、そのページをめくるたびに、

心の中でたくさんの物語が流れはじめます。

ヨーロッパの小さな町や、

森を歩く人々、季節の移ろい。

それらは何気ない日常でありながら、

どこか夢の中のような静けさと

不思議に満ちています。

「絵を描くとは、世界に優しいまなざしを向けること」

安野さんの作品を見ていると、そんな言葉が浮かびます。

ちなみに島根県津和野町にある

《安野光雅美術館》では、

代表作の原画とともに、

彼の人生観や世界観に

じっくり触れることができます。

山あいの静かな風景と相まって、

訪れるだけで心が整います。

そんな二人の巨匠から、

私はたくさんのインスピレーションを受けています。


今回描いたのは、

「月のうさぎが星の釣りをしている」場面。

これは家の窓から

美しい三日月を見ながら

想像して描いた絵です。

月明かりの中、

うさぎがそっと釣りをしようとしている。

それは“希望”や“願い”を静かに集めるような気持ちで

釣りをしているのかな。

私はこの絵を通して、

見る人それぞれが「自分だけの物語」を感じてくれたら

嬉しいなと思っています。

もしかしたら、釣りあげた星に、

あなたの願いもこっそり結びついているかもしれませんね。

メルヘンとは、ただの空想ではありません。

現実の苦しさやさびしさを知っているからこそ、

その中に光を灯す物語を求める心なのだと思います。

藤城清治さんの「光と影の世界にある希望の心」

安野光雅さんの「静けさの中にある優しさ」

その両方のエッセンスを、

私なりの色で描いていけたらと思っています。

これからも、小さな物語のような絵を描いていきます。

よければ、ぜひまた遊びにきてくださいね。

月のうさぎも、きっと夜空に願いを届けるお仕事をしているのかも。

ひとりぼっちの夜にそっと釣り糸をたらして、

だれかの希望をひとつ星にして届けてくれる。

そんな風に想像すると、

夜空を見上げるのが少し楽しみになりますね。

あなたの心にも、ちいさなメルヘンの灯がともりますように。

 

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